【学術会議】「新段階の日本の海洋戦略-開かれ安定した海洋に向けて-」 国際セミナー(上)

2017/8/3    键睿智库   致力于围绕国际和地区热点问题,在线上和线下搭建活跃的公共交流平台。


「新段階の日本の海洋戦略-開かれ安定した海洋に向けて-」

国際セミナー(上)

日 時:

2017年7月3日(火)

13時30分-17時40分


場 所:日本国際フォーラム「会議室」

出席者:


[日 本 側]

伊藤剛 日本国際フォーラム上席研究員・明治大学教授

橋本宏 日本国際フォーラム理事長

山田吉彦 東海大学教授

都留康子 上智大学教授

畠山京子 関西外国語大学准教授

 鶴田順 明治学院大学准教授

渡辺紫乃 上智大学教授

(プログラム登場順)


[中 国 側]

鋒 南京大学中国南海研究協同創新センター執行主任

王鍵 中国社会科学院近代史研究所研究員

杜進 拓殖大学教授

蘇少卿 シンクタンク鍵叡 創始人&CEO

(プログラム登場順)


[事 務 局]

渡辺繭 専務理事

矢野卓也 研究センター長

菊池誉名 主任研究員

伊藤将憲 事務局長

高畑洋平 主任研究員

勝川照夫 研究員

田中翔子 研究助手

佐藤光 臨時研究員(本研究会アシスタント)

本セミナーは、「セッション1:アジアの海洋秩序の現状と課題」、「セッション2:日中関係の安定化と信頼醸成に向けて」の2つのセッションにて行われる。

セッション1:アジアの海洋秩序の現状と課題

山田吉彦 

東海大学教授

現在、南シナ海を通過しなければならない日本との貿易が約20兆円にのぼることに加えて、中東等からのエネルギー輸入の観点から考えても、南シナ海は日本にとって重要な海域である。また、一帯一路政策において中国が北極海航路など海洋に出る場合、日本を通過する必要があることなどを考えると、南(マラッカ海峡)北(北極海航路)に渡る海洋航路の安全等において両国間は協力関係を強化する必要がある。

このような状況において、現在各国の海上警備機関が連携してアジアの海洋安全を保護する動きが強くなっている。これは偶発的な軍事衝突を避ける意味もある。海上警備機関の連携強化を優先的に模索することは、国際法に基づいた紛争の生じえない関係構築のうえで有効である。

朱鋒 

南京大学中国南海研究

協同創新センター執行主任

マラッカ海峡は、石油輸入などの面から中国にとって10年前から重要になっている。マラッカ海峡が中国の経済活動において重要であるため、マラッカ海峡を使わない方策も話し合われているが、代わりとなるものはない。現在、中国経済にとって脅威の8割は海賊であり、他国による脅威はほんの2%に過ぎない。貿易や経済活動の面から考えると、日本や中国のような貿易国家にとって海洋の脅威が現在最も戦略的な脅威である。米国・日本と中国との関係が冷戦のような関係にならない限り、軍事的な脅威にはなり得ない。

21世紀の時代、19世紀のような海洋軍事大国は出現してこない。中国は海洋大国を目指しているが、これは海洋軍事大国を意味していない。もし中国が海洋軍事大国を目指したならば、米国や日本、その他のアジア諸国を敵に回すことになる。中国による侵略行為を不安視する声もあるが、現在は貿易など経済活動によって資源輸入が可能なため、軍事行為によって資源を獲得する必要はない。しかし、どのように安全で信頼できる海洋戦略を構築するかは、現在中国も模索段階である。中国が海洋大国になるうえで、周囲の国との協力関係を構築することが重要となる。環境保護や資源保護なども協力関係に含まれるが、中国の海洋大国になる目標は日本に頼らなければならないものだと考えられる。

都留康子 

上智大学教授

日中両国とも互いの海洋政策を理解していない可能性がある。日本の目指す海洋政策は、2007年の海洋基本法が基本となっている。それを具体化したものが、海洋基本計画であり、これまで2回に渡り策定されている。この海洋基本計画において、「海に守られる国」から「海を守る国」になる必要性について謳われている。具体的には、安全で効率的かつ安定的な海上輸送ルートを確保することや、海洋を法の支配の貫徹する世界人類の公共財(グローバルコモンズ)として保ち続けることなどが謳われている。これらの有する意味は、中国や韓国など近隣諸国との関係での領土保全に加えて、環境保全や資源管理など海の安全へとシフトしてきたということである。

海洋基本法制定後、海洋政策本部を設立し、省庁縦割り型の海洋政策作成を変えることであったが、現状できていない。元来漁業を中心として国益を考えていたが、東シナ海等で資源を開発する場合は通産省の管轄になるなど、分野によって省庁各々の管轄が異なるなど横の連絡が十分でなかった。縦割り行政、横の連絡不足の間に中国の海洋進出が生じてきた。総合海洋政策本部を設立することで弊害を解消しようとしたが、現状は実効的な海洋政策を作成できる段階にないと考えられる。

つまり、まだ日本として海を中心とした一体的な政策が考えられてはいないのが現状である。2007年に海洋国家を目指すことを掲げたが、それがどのような海洋国家であるのか、もう一度考える必要がある。

畠山京子 

関西外国語大学准教授

アジアの不安定化が続いているなか、日本の海上保安庁の役割が拡大している。航行の安全に大きな役割を果たすと同時に、ベトナムやフィリピン等への能力構築支援も実施するなど安全保障分野へも進出している。海保の役割拡大の背景として、これまで中国台頭などアジアのパワーバランス変化に注目されてきたが、ARF等を通じて規範や法の支配の重要性が増した結果、海保の活用が増えた点を見過ごすことができない。つまり、貿易の拡大やARF等の制度深化の結果、ルールを逸脱するコストや戦争実施のコストが高くなったため、自衛隊ではなく、海保の活用が増えてきたと考えられる。

相互依存や制度深化により、非伝統的安全保障問題の重要性が増している。その結果、安全確保を目的とした海保の活動が安全保障へと繋がっている。したがって、海賊対策がメインであった海保の活動は、近年ソフト面において人材育成支援など対話的行為を通じた能力構築支援が増えてきた。このソフト面を補完する形でハードサポート(巡視艇供与・装備品支援)が行われている。

結論として、制度やレジームの深化が、規範や法の支配、正統性の重要性へと繋がった。軍事的対立を避けながら自国の利益を追求するうえで、安く、正統性が高く、他国に懸念を与えない海保の活用がなされてきた。日本による支援の目的は対話的行為を通じて、ASEAN諸国の法執行能力の向上や、国際規範の発信とリマインドを図ることである。これにより日本のフォロワーを作り、法の支配の強化を図ることで、中国の抑止や地域の安定、現状維持へと繋がっている。

鶴田順 

明治学院大学准教授

国家間関係における法の支配は、国家主権の絶対性を否定し、力の支配と対峙されることが多い。現在、南シナ海等において国家間の紛争・対立が頻発しているが、アジアの海が開かれ安定したものとなるうえで、力の支配に対峙するものとして法の支配が重要視されてきた。国際法の観点から、まずは現在の国際海洋法・国連海洋法条約を踏まえて、法的に何が許されて、何が許されないのかに関して、関係各国で検証及び整理する必要がある。その結果として、現在の国際海洋法・国連海洋法条約の曖昧さや不足している点、課題が明らかになる。

現在の国際海洋法・国連海洋法条約が曖昧である場合、関係各国間の解釈の違いや対応の違いが生じる可能性が高い。解釈の違いの解消が容易でない場合、解釈の違いを明確化し、具体的事案で生じうる衝突を事前に想定することで衝突を防止し、対立や衝突を緩和できるように備えることが必要となる。つまり、違いを適切に管理し、危機的状況で実効性のある危機管理メカニズムを構築する必要がある。

現在の国際海洋法・国連海洋法条約に不足がある場合、新たな国際法規範の主張や、現在の法に対する変更要求の妥当性が重要となる。変更要求に対する各国の受容や新たな制度の成立は、変更要求の妥当性やタイミング、要求国の国際社会における影響力、関係各国間での利益認識の一致など複合的な要素が関わる。つまり、変更要求が現状より良い秩序構想となっているのか否かが重要となる。

中国の主張するアジアの海における法支配の「法」が如何なる内容であるのか、仲裁裁判所判決を経ても依然として曖昧である。現在の海洋法を意味するのか、あるいは中国が描く新たな秩序構想に対応した新たな海洋法であるのか曖昧なままである。

自由討議


 中国の海洋進出がアジアの不安定化をもたらしたと言われる一方、日本が積極的に日米同盟のコストを負担しようとしている。つまり積極的にコストをシェアし、アメリカを引き込んでいるように思える。その観点から見ると、中国は秩序の挑戦者として見えるのだと考えられる。(杜教授)


◆ アジアの海洋安全保障と日米の安全保障に関して言えば、以前は一致していない。特に海賊対策が海保の重要な目的であった時代は、日米安全保障とは別の世界のものであった。しかし、尖閣問題を受けて一体化されるようになったと考えられる。(山田教授)


◆ 日本と中国間においてパワーの差はかなりある。したがって、日本の観点から言えば、相互依存の点などから戦略を練る必要があった。日米同盟がこれまで大切にしてきた規範や秩序などが、中国の台頭により失われる恐れがあるため、日米同盟のコスト負担が生じてきた。(畠山准教授)


◆ 国際的なルールは曖昧な部分もあり、ルール変更の要求は今後も出現する。したがって、日米という規定の枠組みで考えることを前提とせず、中国を含めて新しい対話によってルールを決めることが重要となる。(杜教授)


◆ 中国は3カイリ等に関して、国際法として成立している以上受け入れている。国連海洋法条約は曖昧であり、仲裁裁判所判決も含めて受け入れられない。(朱主任)


◆ 古い海洋法条約が欧米色の強いものであったため、新しい海洋法条約は途上国の意見も含めたものとして、それに代わるものであった。したがって、現在の条約が欧米によって作られたものという主張は当たらない。(都留教授)


◆ 国連海洋法条約は根本的な意味で改善はなされていない。条約を利用する場合、国家によって解釈が異なるのは当然である。沖ノ鳥島の問題など、日本と中国やアジア諸国で解釈は異なる。日本の方が条約利用に優れているのは確かだが、日本が海洋法の代表として、その立場を中国に受け入れさせようとしているのは受け入れられない。(朱主任)


◆ 中国は国連海洋法条約を利用することで受益者となっている。例えば、マラッカ海峡は国際海洋法によって自由通行が認められているからこそ、貿易等で利益を受けている。(鶴田准教授)



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